チェルノブイリ原発事故では年5ミリシーベルト以上は強制移住地域に、5~1ミリシーベルト地域は移住の権利が認められている。福島では避難区域の指定に、チェルノブイリ強制移住地域の4倍の年20ミリシーベルトまで安全という基準値を使用した。これが子どもたちにとって、また大人にとっても危険ではないのか、チェルノブイリの資料に戻って調べたい。

 ウクライナでは年間被ばく線量が5ミリシーベルト以下とされる汚染地帯に500万人ともいわれる人々が住み続けている。2011年4月、チェルノブイリ原発事故25周年の会議で、ウクライナ政府は、汚染地帯の住民に深刻な健康被害が生じていることを明らかにした。国際社会に支援を訴えながら、放射線の影響とは認められていないウクライナの健康被害。チェルノブイリ現地政府の報告を受け容れない国連科学委員会(UNSCEAR)の問題を考える。
参考 ①チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告「第2回ウクライナは訴える」
②低線量汚染地域からの報告ーチェルノブイリ26年後の健康被害 馬場朝子・山内太郎著 NHK出版

以下の表で、ウクライナ政府報告書(青)とUNSCEARの主張(黄)を比較した。
自分の考えは(紫)で記載。
UNSCARについては原子力および放射線防護に関する国際機関 を参照ください。
低線量被爆についてのウクライナ政府報告書とIAEA

1. 放射線被爆の影響
ウクライナ政府は、汚染地帯の住民に白血病、白内障、小児甲状腺癌、心筋梗塞や脳血管障害などさまざまな慢性疾患が増えており、その原因の一が放射線であるという見解を示した。子供たちの健康悪化も深刻で2008年のデータでは事故後に生まれた子供たちの78%が慢性疾患を持っていたという。
UNSCARなど国際機関、は除染作業者の白血病、白内障と小児の甲状腺癌のみを被曝の影響と認め、他の健康被害を認めていない。

2.なぜこのような見解の相違があるのか? 主張の根拠を比べる。
ウクライナ政府報告は被災者の健康状態を追跡して一括管理するデータベースから、230万人以上の健康状態と被爆の関係を検討した。事故の前から現在まで、被災地で治療してきた現場の医師たちの声が反映されている。
UNSCARの主張 ウクライナ政府の主張は科学的に証明されたものでない
 =健康被害と被爆の関係が疫学的方法で証明されていないので、認められない。

3.疫学的証明とは? 疫学的証明は現実に可能か?
UNSCARが求める疫学的証明とは? 
 ある集団の被爆線量と健康被害との間に統計的に有意な相関があること
 =被ばく線量が多い人ほど病気発生の頻度が大きい 
   事を証明しない限り被爆の影響とは認めない!!
ウクライナの医師・専門家の反論 疫学的証明は現実には不可能 個々人の被ばく線量が入手できない
 ・被災者は多くが移住し、個々人の被ばく線量の確定は困難 
 ・住民の健康データがソ連当局によって隠され、医療統計も改ざんされた
 ・放出された放射線核種別の線量の復元は困難
疫学的手法で証明できないから被爆による健康被害は何も起きていない
 とするのは非科学的、倫理にもとる態度である


4.放射線被爆の影響を証明する方法
★ウクライナ 放射線量が異なるが、その他の点では同様な集団同士を比べる方法
★UNSCAR 疫学的証明が唯一の科学的証明

★疫学的証明がないのに、UNSCARが放射能による障害と認めた例外がある
 http://natureflow1.blog.fc2.com/blog-entry-146.html
小児甲状腺癌を事故の放射能による障害と認めたのは、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の半減期が8日と極めて短かったことによる。半減期の長い放射性セシウム、ストロンチウムなどについては認めない!!
国連科学委員会UNSCARは、国際原子力機関IAEAと同様、原子力の平和利用・原発を促進する立場であり、原発事故による大量被爆から原子力発電を守りたいのであろう。
★ウクライナ政府が、個々人の被ばく線量の確定ができないという主張について
NHKスペシャル 空白の初期被ばく~消えたヨウ素131を追う~でも取り上げていたとおり、福島原発事故でも、放出放射性物質の事故直後からの測定を国が充分に行ってこなかったので、個々人の被ばく線量を確定する事は困難。


5.結論
UNSCEAR2008年報告書によると、「ウクライナ国立被爆センターに登録されている人々(236万人)のうち、公式に被爆線量が確認されているのは40%程度(94万人)であるため、これらの線量をもつ人々のみにに基づくどんなどんな計算も偏りが出るだろう」として「小児甲状腺癌以外被爆による被害はない」と結論付けている。参考②による。 

94万人のデータが全体の40%であるといって、信頼性を認めないというのはどういうことか?
原爆投下後の調査で、爆心地から2.5km以内で被爆した86,572人の生存者について、放射線影響調査が行われ、47年間に及ぶ 調査の結果、がんだけでなく心疾患、脳溢血、消化器疾患、呼吸器疾患が、被爆により増加することが明らかになりました。被爆線量とがんの発生率には直線関係が成り立つことが認められている。

INSCARは重大な原発事故において、被爆による被害が大きくなればなるほど、被爆によることを証明する事が事実上困難となるような条件を課して因果関係を認めないように思われる。


ウクライナ政府が
被災者の健康状態を追跡し
一括管理する230万人以上のデータベースをつくり
被災地で治療してきた医師たちの声を政府報告として提出した勇気
日本政府は、科学者は、被災者の健康被害がでてきても
因果関係なしと切り捨てていくだろう
非科学的と言われても、沈黙することを拒否した
ウクライナの人たちの叫びに耳を傾けよう
福島原発事故の被災者のことを忘れてはならない
明日の私たちのことなのだから・・・



2013.01.18 Fri l チェルノブイリ放射線障害 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

ご訪問ありがとうございました。
ご訪問とコメントありがとうございました。「低線量被爆についてのウクライナ政府報告書とUNSCEAR」を読ませていただきました。ウクライナの現状に関しては、日本国政府は知っていながら知らないフリを決め込むようですね。フクシマの事が段々と風化していく事は恐ろしい事です。
2013.01.28 Mon l koujichin. URL l 編集
福島を忘れてはならない
コメントありがとうございます。同じ気持ちの方がおられることで、何か励まされた気がします。
日本の原発事故はチェルノブイリよりずっと酷いことになるのではないかと心配です。診断結果の隠蔽、病人がでても因果関係を認めない、データはICRP系列の医師で固めて、放射線は100mSvまで安全だったとか・・・・
ウクライナ政府は住民の医療に携わる医師たちの叫びをくみ上げ、政府報告書を提出したのはとても立派!!
日本政府、医療機関は何もなかったと言うことにしようと準備着々ではないでしょうか?
2013.02.03 Sun l natureflow. URL l 編集

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