2月12日 NPO法人知的人材ネットワーク”あいんしゅたいん”宛に質問状を送った。

”あいんしゅたいん”が福島原発事故以後、「何よりも危険なのはパニックです。不確かな情報による、不安はストレスとなり、免疫力の低下に繋がります。その結果発ガンのリスクをも増大させます。考えようによっては、低容量の放射線以上の悪影響を身体に及ぼします。」という情報発信を行っていること、また
安易な「福島原発周辺地域における、児童避難準備の提案」に反対する という意見表明を行っていること。
科学者の一人として福島に生きるを支える において「子供の命を守る→脱原発」「生命科学者なら→脱原発」にはならないと発言されていること、
理論物理学、免疫学の人たちが、科学者として情報発信をしていること、また広く大学院生を巻き込んで活動を行っていることなどに大きい疑問を感じたので質問状を出した。

現時点で質問に答えていない回答をもらったが、これは次に触れる。
あいんしゅたいんのHP はメンテナンスのためサービスを一時停止となっており、停止は1月に及ぶ。すべての記事はリンク切れになっている。これは一般への情報発信を中止したのか、事情は不明である。

質問状は NPO法人”あいんしゅたいん”への質問状 改訂版

私は東日本大震災以来情報発信と現地での支援をしておられることに関心を持つ者です。今なお16万人といわれる福島の避難者、汚染地域に暮らす人々の「健康を享受する権利」を保証していくために何が必要かを考えて実行に移すことが緊急に必要と考えております。
「東日本大震災情報発信ページ」及び「低線量放射線検討会」についてお尋ねいたします。質問は7項目にわたっておりますが、ぜひともご検討の上、質問にお答えいただきますようにお願い申し上げます。なおこの質問状は、ブログに掲載する予定です。回答をいただきましたらそれも掲載いたします。

質問要約
1.ウクライナ政府は、年間被ばく線量が5ミリシーベルト以下とされる汚染地帯に住む236万人のデータベースをもとに汚染地帯の住民に深刻な健康被害が生じていることを報告書で明らかにしているが、この報告書をどのように考えるか?

2.低容量の放射線(200ミリシーベルト以下)の影響について、「晩発性障害は必ず克服できる」と主張しているが、必ず克服できると主張される科学的根拠を示してほしい。

3.「何よりも危険なのはパニックで、不安はストレスとなり、発ガンのリスクを増大させる。考えようによっては、低容量の放射線以上の悪影響を身体に及ぼす」という主張の疫学的根拠を示してほしい。

4.「晩発性障害は必ず克服できる」は癌の自己責任論。放射線被曝によって健康障害が生じたとき、因果関係を認めないことを支持する働きをする。このことを人道上どう考えるのか?

5.福島原発事故の被災者が、チェルノブイリの強制移住基準値の4倍、20ミリシーベルとの放射線に晒されながら、その影響を克服する方法とは何か?その方法で克服できるという科学的根拠を示してほしい。

6.国連人権理事会特別報告者アナンド・グローバー氏は、「日本政府は、避難区域の指定に年間20mSv という基準値を使用したがこれは問題、チェルノブイリ事故の際、強制移住の基準値は、年間5mSv であった。」と勧告しているが、これをどう評価するか?

7.京都大学旧湯川研究室同窓会有志が「原発の再稼働」をめぐって声明を出されている。
”これ以上に放射能汚染という最悪の遺産を未来世代に残さないために、「脱原発」への決断は、わが国にとって不可避、緊急の課題である。”
「あいんしゅたいん」はこの声明に対してどのような立場なのか?
NPO法人あいんしゆたいん東日本大震災情報発信グループ代表
理事長  坂東昌子様
常務理事 宇野賀津子様

「東日本大震災情報発信ページ」及び「低線量放射線検討会」についての質問

1.  「低線量被曝の実際を科学的に検証することにより、現在国民的課題である低線量放射線の影響の克服を考えたいという思いから発したものです」と「追跡!真相ファイル: 低線量被ばく 揺れる国際基準」についてのNHKへの公開質問状 で言っておられます。
「低線量被曝の実際を科学的に検証する」とありますが、チェルノブイリにおける低線量被曝の影響をどのように検証されたのでしょうか。福島原発事故による放射線被曝の参考になるのは、放出された放射性物質の量(広島原爆の168倍セシウム換算)や内部被曝の重要性から、原爆による瞬間的な被爆より、26年前のチェルノブイリ事故による被曝であると考えます。

 ウクライナ政府は、年間被ばく線量が5ミリシーベルト以下とされる汚染地帯に住む236万人のデータベースをもとに汚染地帯の住民に深刻な健康被害が生じていることを報告書で明らかにしています。 [1] 
その中で、白内障とその他の眼疾患、免疫への影響、循環器系疾患、気管支肺系統疾患、消化器系疾患、血液学的影響などさまざまな影響が現れていることを、被災住民の基本登録の区分、
グループ1:事故処理作業者
グループ2:強制避難させられた住民および移住させられた住民
グループ3:汚染度の低い地域に住んでいる住民
グループ4:グループ1から3に属する人から生まれた子ども
に分けて詳細に報告しています。被災住民の子ども(グループ4)の健康に関する評価によれば、彼らの中に健康な子どもの数は10%を超えないということです。この報告書に対する評価はいかがでしようか。
「衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団」が2012年10月、ウクライナ、オーストリア(IAEA)、フランス(ITER)などを訪問し、調査、各団体との意見交換を行った際の報告書[2]に含まれる資料、『チェルノブイリの長い影~チェルノブイリ核事故後の健康被害』 [3] においてIAEA,ICRPなど国際機関との見解の相違についても多くの言及があります。
 その他チェルノブイリ原発事故の現地の医師、科学者の報告も多数あると思います。これらを真摯に検討すれば、低線量放射線の影響が発ガンのみでなく、循環器系、血液系、免疫系など多岐に及び、多くの被災者を苦しめていることを否定できないと思います。 貴法人の見解を示してください。

2.低容量の放射線(200ミリシーベルト以下)の影響について、発ガンリスクの上昇があるとのことで、癌のメカニズムを解説しておられます。生体は放射線あるいは化学物質の作用からの防護システムを持っていることは確かで、その防護システムを乗り越えて癌化し、大きな死亡原因になっているのでしょう。
 東日本大震災 ー 放射線の影響3 において、 福島の斉藤紀医師の言葉「晩発性障害は必ず克服できる」を引用しておられますが、必ず克服できると主張される科学的根拠をお示しください。癌はいまだに人類が克服できない病気で日本でも死亡原因の首位となっているのではありませんか?
 貧乏くじを引いてしまった人が癌になる、しかし貧乏くじを打ち消すくじも存在するので、打ち消すくじを増やすように、笑い、希望、抗酸化食事、心のケアー、サポート、免疫力の強化などを挙げておられます。それで克服できるのでしょうか。歌舞伎界の巨星2人が相次いで癌で亡くなられました。この方たちは貧乏くじを引いてしまわれ、これを打ち消す努力をされなかったということになるのでしょうか。

3.東日本大震災 ー 放射線の影響 において 「何よりも危険なのはパニックです。不確かな情報による、不安はストレスとなり、免疫力の低下に繋がります。その結果、感染症にもかかりやすくなり、また発ガンのリスクをも増大させます。考えようによっては、低容量の放射線以上の悪影響を身体に及ぼします。」といっておられます。
 福島県のいろいろな地域における放射線被曝の危険と、不安による危険の大きさを実証的に比較するには何らかの数量化が必要と考えますが、そのような疫学的調査研究をお示しください。

4.「晩発性障害は必ず克服できる」は癌の自己責任論に通じます。癌の原因となる放射線被曝によって健康障害が発生したとき、病気になった人のくじ運の悪さ、克服しなかったことへの自己責任に帰着させる働きをします。また被曝による健康悪化が生じた時、様々な原因が考えられるとして、因果関係を認めないことを支持する働きをします。このことを人道上どのようにお考えですか。

5.「低線量被曝の実際を科学的に検証することにより、現在国民的課題である低線量放射線の影響の克服を考えたいという思いから発したものです。」とNHKへの公開質問状で言っておられます。被災された方が、チェルノブイリの強制移住基準値の4倍、20ミリシーベルとの放射線に晒されながら、その影響を克服する方法とはどのような方法ですか。そしてその方法で克服できるという科学的根拠を示してください。

6. 国連人権理事会 特別報告者アナンド・グローバー氏は、国連人権理事会および国連総会に報告・勧告する独立専門家として来日、東日本大震災後、被災者などに対して“健康を享受する権利”が機能していたかどうかについて中間報告を発表しています。[4]その主要点は 
 A.日本政府は、避難区域の指定に年間20mSv という基準値を使用したがこれは問題である
  チェルノブイリ事故の際、強制移住の基準値は、年間5mSv であった。
 B.福島県が実施している健康管理調査は範囲が狭いので、放射能汚染区域全体での実施を要請した。
A.について極めて重要な指摘であると考えますが、貴法人の見解はいかがでしょうか。

注1 関係部分原文翻訳
 これは、年間20 mSv までの実効線量は安全であるという形で伝えられました。また、学校で配布された副読本などの様々な政府刊行物において、年間100 mSv 以下の放射線被ばくが、がんに直接的につながるリスクであることを示す明確な証拠はない、と発表することで状況はさらに悪化したのです。
 ここで思い出していただきたいのは、チェルノブイリ事故の際、強制移住の基準値は、土壌汚染レベルとは別に、年間5 mSv 以上であったという点です。また、多くの疫学研究において、年間100 mSv を下回る低線量放射線でもガンその他の疾患が発生する可能性がある、という指摘がなされています。研究によれば、疾患の発症に下限となる放射線基準値はないのです。

7.2012年4月27日、湯川博士の弟子らが、 「原発の再稼働」をめぐって各界に訴える:京都大学旧湯川研究室同窓会有志 をだしておられ、理事長のブログにおいても紹介しておられます。[5] その中で
これ以上に半永久的な国土の、そして世界の放射能汚染という最悪の遺産を未来世代に残さないためにも、「脱原発」への決断は、わが国にとって不可避、緊急の課題となっていると言わざるを得ません。「脱原発」に伴う困苦が生じても、国民はきっとそれを乗り超えるであろうことを信じています。

 私はこの声明と同じ気持ちでおりますが貴法人「あいんしゅたいん」はどのような立場でいらっしゃいますか。法人としての意見が難しければ、個人の見解を聞かせていただければ幸いです。

以上の7質問についてお答えくださいますようお願い申し上げます。なおこの質問状は、ブログに掲載する予定です。回答をいただきましたらそれも掲載いたします。

参考資料
[1]ウクライナ政府(緊急事態省)報告書
『チェルノブイリ事故から25年 “Safety for the Future”『チェルノブイリ事故から25年 “Safety for the Future”』より (2011年4月20-22日、チェルノブイリ25周年国際科学会議資料)
日本語訳
第3章 チェルノブイリ惨事の放射線学的・医学的結果
第4章 チェルノブイリ事故の経済的・社会心理的影響
[2] 衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書
[3] 『チェルノブイリの長い影~チェルノブイリ核事故後の健康被害』研究結果の要約:2006年最新版>
[4] アナンド・グローバー氏のプレス・ステートメント(全文)
[5] 「原発の再稼働」をめぐって各界に訴える:京都大学旧湯川研究室同窓会有志
 「原発の再稼働」をめぐって各界に訴える:京都大学旧湯川研究室同窓会有志 pdf版

2013.04.06 Sat l 原発と科学者の社会的責任 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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