朝日記事より転載
原発「即ゼロ」首相に迫る 小泉元首相会見「決断すればできる」
2013年11月13日

小泉発言、政権を挑発 原発ゼロ―決断の環境「郵政よりいい」 記者会見
2013年11月13日
原発「即ゼロ」首相に迫る 小泉元首相会見「決断すればできる」
小泉純一郎元首相(71)は12日、日本記者クラブで会見し、「首相が決断すればできる権力、それが原発ゼロの決断だ」と安倍晋三首相に原発即時ゼロの方針を打ち出すよう迫った。原発再稼働や核燃料サイクルに反対の立場を表明。世論の支持が広がれば、安倍政権が原発政策をまとめる上で、無視できなくなりそうだ。▼2面=政権を挑発、38面=道筋は

 小泉氏は会見で、原発ゼロの時期について「即ゼロがいい」と明言した。原発の再稼働については「そんなに多くは再稼働できないだろう。しかも、再稼働するとまた核のごみも増えていく」と反対の立場を鮮明にした。核燃料サイクル政策について「どうせ将来やめるんだったら今やめた方がいい」と中止を求めた。

 原発をめぐる今の政治状況について「野党は全部原発ゼロに賛成だ。自民党の賛否は半々だと思っている」との見方を示した。そのうえで、「首相が決断すれば、反対論者も黙る」と強調。「結局、首相の判断力、洞察力の問題だ」と述べた。

 エネルギー確保の代案を出さずに原発ゼロの主張をするのは無責任だとの指摘に対しても「原発ゼロという方針を政治が出せば、必ず知恵のある人がいい案を出してくれる」と反論した。

 さらに、小泉氏は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場について「技術的に決着している。問題は処分場が見つからないことだ。10年以上かけて一つも見つけることができない。これから政治の責任で見つけなさいというのが、(原発)必要論者の主張。よっぽど楽観的で無責任だ」と述べた。

 小泉氏の発言について、菅義偉官房長官は12日の記者会見で、改めて原発を活用する政策を続ける考えを示した。ただ、安倍政権は発電量に占める原発比率をはじめ、原発に将来どこまで依存するか、方針を決められていない。

 政界引退後も発信力のある小泉氏の発言で「原発ゼロ」の世論に再び火がつけば、原発再稼働を織り込んだ政権のエネルギー政策に批判が高まる可能性もある。


小泉発言、政権を挑発 原発ゼロ―決断の環境「郵政よりいい」 記者会見
 首相の権力は強い。それを「原発即時ゼロ」に使うべきだ――。小泉純一郎元首相は、退任以来初めてとなる12日の記者会見で、安倍晋三首相に繰り返し要求した。かつて小泉氏から引き立てられた安倍氏だが、政権の原発政策に真っ向からぶつかる小泉氏に、応じる気配はない。▼1面参照

 「安倍首相が原発ゼロにすると方針を決めれば、反対派はもうできません。反対は」

 記者会見に臨んだ小泉元首相の冒頭発言は1時間に及んだ。その中で安倍首相を名指しすること6回。現役時代のように大きな手ぶりを交えながら、歯切れ良く安倍氏に決断を迫った。

 安倍首相は9日のBS朝日の番組で「いま(原発)ゼロと約束することは無責任だと思う」と批判。「政治の師匠」(安倍首相)とも仰ぐ小泉氏の考えを受け入れる気配はない。

 小泉氏は「弟子」の姿勢を見越してか、会見では、安倍首相への硬軟を織り交ぜた訴えが続いた。

 「原発ゼロ」発言をめぐっては、高レベル放射性廃棄物の処分について批判が根強い。「これからメドをつけられると思う方が楽観的で無責任すぎる」と反論。一方で、原発ゼロについて「壮大な事業だ。夢のある事業。自然を資源にする事業だ。それに首相の権力をふるうことができる。こんな運のいい首相はいない」と説いた。

 話題は在任中の最大の山場だった郵政民営化にも及んだ。2005年の通常国会で法案は参院で否決。小泉氏は「郵政民営化の時よりも、はるかに環境いいですよ」と指摘。「野党は全部、原発ゼロに賛成。反対は自民党だけだが、本音を探れば賛否は半々だと思いますね」

 小泉氏の発言には「脱原発」を掲げる野党から「私たちとも接点がある」(志位和夫共産党委員長)と賛同の声があがる。衆参両院で過半数を握る与党に、攻め手が見いだしにくい野党には格好の材料だからだ。

 ただ、与野党ともに真意はつかみかねている。小泉氏は会見で新党結成や脱原発派との連携を提案されたと明かしたが、「それぞれの立場でやった方がいいんじゃないか」と述べるにとどまった。

 では、「原発ゼロ」をどう実現させるのか。小泉氏が会見で一貫していたのは、それをできるのは首相という権力者しかいないとの確信だった。小泉氏はこう力を込めた。

 「結局、首相の判断力、洞察力の問題だと思いますが、いずれにしても、そういう方向にかじを切ってもらいたいなと思います」

 ■原発政策、自民内に異論も

 「小泉さんは、信念に基づいて発言をし続けていると思いますよ」

 小泉氏の会見終了から約1時間後。菅義偉官房長官は会見で語った。「政府として責任あるエネルギー政策を推進していくことがきわめて大事だ」と繰り返した。

 東京電力福島第一原発事故の対応に追われる政権にとって、「脱原発」を迫る小泉氏は厄介な存在だ。政権は、安全性が確認された原発は再稼働する方針。経産省が近くまとめるエネルギー基本計画でも、原発活用を前提にする方向で、すぐに政策転換できる状況にはないのが実情だ。

 「必要論者」と指摘された側も黙ってはいない。小泉政権で官房長官を務め、原発の再稼働を進める議員連盟の会長を務める細田博之幹事長代行は12日、「一石を投じたことは評価するが、正しくない結論だ。石炭火力への依存は温暖化を大きくする。世界の流れは感覚的なものではなく科学的なものだ」と断じた。

 だが、小泉氏の発信を無視してばかりもいられない。石破茂幹事長は「(政権・与党は)原発依存度を下げていく。めざす方向性は一致している」と言及。党内で小泉氏の過去の発言の検証にとりかかったものの、正面から反論しようという動きは見られない。

 一方、小泉氏が「賛否半々」と指摘したように、原発事故後、自民党内にも政権の原発政策に疑問を持つ議員が増えつつある。以前から脱原発を主張する河野太郎衆院議員だけでなく、都市部の当選1回生の若手議員らが中心だ。まだ存在感を示すほどではないが、国の核燃料サイクルを見直す勉強会を立ち上げ原発政策の見直しを議論している。

 ■電力、強い危機感

 「どういう根拠で発言しているのか。日本のエネルギー事情を理解した上での発言とは思えない」

 大手電力の幹部は12日夕、困惑を隠さなかった。電力業界は、発信力がある小泉氏の「原発ゼロ」発言に危機感を強めている。

 大手電力10社の2013年9月中間決算は、5電力が経常黒字となり改善が目立った。ただこれは、電気料金を値上げした効果だ。

 業績を改善しようと、各社は原発再稼働を急ぐ。原発が1基動けば、火力発電の燃料費を年間1千億円規模で減らすことができ、利益が増えるからだ。電力大手幹部のなかには、再稼働できない状態が続けば、電気料金の再値上げが必要だと強調する声もある。

 そんななかでの小泉発言に、電力大手は戸惑う。10月末の決算会見で、東電の広瀬直己社長は小泉発言について「そういうお考えは小泉元首相だけではないわけで、それ以上はない」と素っ気なく答えるにとどめた。

 ただ、経済界全体でみれば、原発再稼働で一枚岩ではない。今年3月の政府の産業競争力会議では、三木谷浩史・楽天会長やローソンの新浪剛史社長は、原発再稼働に慎重な姿勢だった。今後、こうした声が強まる可能性もある。

 小泉氏の原発ゼロ論は、皮肉にも経済界が火を付けた面もある。きっかけは、フィンランドにある原発ごみの高レベル放射性廃棄物最終処分施設「オンカロ」の視察だ。8月、評論家の田中直毅氏の声がけで、日立製作所、東芝、三菱重工業の原発メーカー3社の幹部らが同行した。そこで小泉氏は、最終処分がいかに難しいかを知り、「原発ゼロ」への思いを強くした。

 小泉元首相の姿勢を、原発メーカーのある関係者は複雑な思いでみつめ、原発を推進する安倍政権にすがる姿勢をみせる。「現政権は原子力に対する覚悟がある。冷静な対応をしてもらえるだろう」

 ■原発議論、広げる契機に

 《解説》小泉元首相の発言が注目されるのは、多くの人が感じるもやもやした思いを代弁しているからだ。想像を絶する原発事故が起きたのに、何も変わらないまま、事故と被災者を忘れたかのような空気が流れ始めている。「変えなくてはダメだ」と多くの人が思っている。

 今後のエネルギー政策について、政府はどの程度原発に依存するか明確にしていない。事故から2年8カ月。なし崩しで原発の再稼働の準備が進められている一方で、被災者はいまだに中ぶらりんの状態だ。いつ帰郷できるのか、もう帰郷できないのか、はっきりしない。

 小泉氏はフィンランドの高レベル放射性廃棄物処分場を視察したことがきっかけで考えを固めたという。世界3位の原発大国の日本では、すでに多くの使用済み燃料がたまっている。小泉氏が主張するように、すぐに原発をゼロにしたとしても、解決にはけた違いに大きな仕掛けが必要だ。

 表で議論しないまま物事を決める、今の日本の政治のやり方に、小泉氏が自分の影響力を自覚して「ノー」を突きつけた。発言の後ろには多くの共感がある。議論を社会全体に広げるべきだ。(竹内敬二)

 ■小泉元首相の会見での発言(要旨)

 小泉純一郎元首相が12日に行った記者会見の要旨は以下の通り。

 【原発ゼロ】読売新聞に小泉原発ゼロ発言を批判する記事があった。ゼロにした後どういう代案があるのか。原発ゼロという方針を政治が出せば、必ず知恵のある人がいい案を出してくれるというのが私の考えだ。国会議員だけではなく、専門家の知恵を借りれば、想像できないような代替エネルギーが確保できるのではないか。

 原発推進論者は、核のごみの処分は技術的に決着している、問題は処分場が見つからないことだと言う。ここからが私と違う。必要論者はメドをつけるのが政治の責任ではないかと言う。私の結論はこれから日本で核のごみの最終処分場のメドをつけられると思う方が楽観的で無責任すぎる。

 首相が決断すればできる権力、それが原発ゼロの決断だ。私の郵政民営化のときよりも、はるかに環境がいい。野党は全部、原発ゼロに賛成だ。原発ゼロ反対は自民党だけだ。もし安倍首相が原発ゼロにすると決めれば、反対派はもう反対はできない。

 しかも壮大な事業だ。夢のある事業。自然を資源にする事業だ。それに首相の権力をふるうことができる。こんな運のいい首相はいない。これは結局、総理の判断力、洞察力の問題だと思うが、いずれにしても、そういう方向にかじを切ってもらいたいなと思います。

 【中国】私が辞めた後、首相は一人も靖国神社に参拝していない。それで日中問題はうまくいっているのか。首脳会談できているのか。そうじゃないと分かっただろう。靖国参拝を批判する首脳は中国、韓国以外いない。中国には今の安倍首相の対応でいい。

 【沖縄】沖縄の基地負担軽減、日本の安全保障、海洋国家日本としてメガフロート(海に浮かべる人工の浮島)を真剣に政府が検討した方がいい。

 【質疑応答】

 ――原発ゼロの時期は?

 即ゼロがいいと思う。再稼働をするにしても、そんなに多くは再稼働できないだろう。しかも、核のごみも増えていく。最終処分場が見つからないだろう。だったらすぐゼロにした方がいい。

 ――核燃料サイクルも含めて?

 もちろん。どうせ将来やめるんだったら今やめた方がいい。
2013.11.14 Thu l 脱原発・エネルギー政策 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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