(集団的自衛権 行方を問う)国際政治の現実映していない 藤原帰一・東京大学教授
朝日新聞 2014年3月28日
より転載

 日本政府は、集団的自衛権は行使できないという憲法解釈に立つことで、軍事協力の範囲に制約をかけてきた。

 だが今、枠組みは反転している。米国は、日本のせいで中国との紛争に巻き込まれることを真剣に恐れている。日本は「中国に譲らない」ことを重視する強硬政策を採り、その対立に米軍を巻き込みかねない勢いだ。

 つまり今は、集団的自衛権の問題、すなわち「米国からの軍事協力要請にどう応じるか」が日本の重要課題という状況ではない。日本と世界の平和と安定を守りたいなら、何より中国との関係改善と東アジアの緊張緩和に取り組むべきなのだ。そしてその作業を米国と連携しつつ進める。それらが真の課題だ。

 日中関係を見てほしい。日本政府も中国政府も「相手に対して譲らない」ことを重視していないだろうか。そうした強硬政策を両国のナショナリストが支持する状態は、紛争が起こりやすい状態の典型例である。

 最初は偶発的で小規模な衝突でも、もし双方が引かなければ本格的な軍事紛争が始まってしまう。世界の歴史はそう教える。私たちが警戒すべきは、楽観に基づく希望的観測なのだ。

 集団的自衛権の問題を考えるとは、どういうことか。それは突き詰めれば、同盟国が軍事行動での協力を求めてきたとき応じるかどうか、という問題だ。今の日本で言えば、米国から軍事行動の協力要請があったときにどうするか、が主眼になる。

 米国への軍事協力は、イラク戦争などで過去にも議論されてきたテーマだ。それらの議論には従来、一つの明確な枠組みがあった。「日本を戦争に巻き込もうとする米国と、巻き込まれる日本」という枠組みだ。

 一部には、「日本が集団的自衛権の行使を容認すれば、中国との有事の際、米国からの協力を取り付けやすくなるはずだ」との期待もあるようだ。しかしそれも希望的観測に過ぎない。まず、米政府の政策の優先順位を同盟国が変えることは非常に難しい。また米政府は、東アジア地域の緊張が高まることは自国のコストの増大につながる、と警戒するだろう。

 なぜ今、集団的自衛権が浮上しているのか。私には「国内政治の力関係の投影」にしか見えない。改憲勢力が議会で力を強めた変化の投影だ。国際政治の現実を映した動きとは思えないのである。

2014.03.28 Fri l 歴史認識・外交 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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