九州電力川内原発が新規制基準を満たしたとして、再稼動が準備されている。福井地方裁判所が5月21日、関西電力大飯原子力発電所を運転させてはならない、という画期的な判決を出した。ここで判決を振り返る。
(ニュースのおさらい ジュニア向け)大飯原発に運転禁止の判決
2014年6月14日朝日夕刊 より転載

福井地方裁判所が5月21日、関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)を運転させてはならない、という判決を出しました。「大飯原発の地震対策は万全です」という電力会社側の主張は、どうして裁判所に認められなかったのでしょうか。

 樋口裁判長が判決を導く上で最も重くみたのは
「生存を基礎とする人格権は、最高の価値を持つ」
という考え方だ。つまり、人の生命は何物にも代え難いというもので、福島第一原発のような事故が起きる可能性があれば、大飯原発の運転は認められない、と言い切った。

 ■地震への対策「もろくて弱い」

 福井地裁の樋口英明裁判長は判決で、運転の禁止を命じた理由を「大飯原発の安全技術と設備は、もろくて弱いものと認めざるを得ない」と述べた。

 現在、全国の12原発19基が運転再開に向けて審査を申請している。これらの原発を基点に半径250キロ圏内の円を描けば、日本列島がほぼすっぽりと包まれる。判決の考え方によれば、国民のだれもが原発事故が起きたときに人格権を侵される危険性が出てくる「当事者」だ。判決が、今後の再稼働に向けた審査の行方に影響を及ぼすのかどうか、注目される。

運転再開申請中の原発と半径250km圏

 2011年3月の東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転の禁止を求めた裁判の判決は初めてだ。大飯原発は13年9月に定期検査のため運転を停止しており、現在は新規制基準に基づく原子力規制委員会の再稼働に向けた審査を受けている。

 樋口裁判長が判決を導く上で最も重くみたのは
「生存を基礎とする人格権は、最高の価値を持つ」
という考え方だ。つまり、人の生命は何物にも代え難いというもので、福島第一原発のような事故が起きる可能性があれば、大飯原発の運転は認められない、と言い切った。

 そんな考えをもとに樋口裁判長は、大地震が起きた時に原発の冷却機能が働くかを検討した。05年以降、安全対策の基準となる「基準地震動」を超える大きな地震が東日本大震災を含めて5回原発を襲ったことなどを理由に、関電が安全という根拠は「信頼できない」とした。

 樋口裁判長はまた、大飯原発で使用済み核燃料を貯蔵するプールについても安全性は十分ではないとし、地震対策がきちんと取れていないと指摘した。

 関電は、安定した電力供給には原発が必要だと訴えた。しかし、判決は「きわめて多数の人の生存に関わる権利と、電気代が高い低いという問題とを並べた議論の仕方自体が、法的には許されない」と述べた。

 さらに、原発の運転停止で多額の貿易赤字が出るという主張にも、「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻せなくなることが国富の喪失だと考える」と結論づけた。

 判決に不服な関電は、名古屋高裁金沢支部に控訴。関電社長は、原子力規制委員会の審査に合格するなど、条件が整えば原発を動かす考えだ。運転禁止の判決が確定しなければ運転はできるが、裁判所に「安全対策が不十分」と言われながら強行すれば、市民から「おかしい」という声も出てくるだろう。

 ■半径250キロの危険認める

 この裁判は、福井県民ら計189人が訴えていた。そのうち大飯原発から250キロ圏内に住む原告166人について、判決は運転禁止の訴えを認めた。「250キロ」は、福島第一原発事故の際に政府が想定した「最悪シナリオ」にもとづく。プールに保管される使用済み燃料が冷却できなくなるおそれが指摘され、当時、東京都まで避難対象になる可能性が検討された。

 250キロという広い範囲の住民に「人格権を侵害される具体的な危険がある」と認めたことも今回の判決の特徴だ。国が定める事故時の防災重点地域は30キロ圏内だが、その範囲ですら住民避難の計画が十分に進んでいない。事故がおきた時に住民の命を守る態勢ができているのか――。判決はそのことを改めて問い直す意味も持っている。

 実際、福島事故後の今もプールは原子炉ほど頑丈な施設で守られていない。それでも安全だと言う関電の姿勢を、判決は「深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとに成り立っている」と批判した。

(大島大輔)

2014.07.22 Tue l 原発再稼動 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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