福島医大放射線医学県民健康管理センターの大平哲也教授ら同大のグループ、東電福島原発事故による外部被ばく線量の程度と、甲状腺検査の先行検査時に甲状腺がんが見つかった18歳以下の割合(有病率)に関連はみられないとする研究結果を発表した。9月2日、国際医学学術誌「Medicine」電子版に論文が掲載された。
論文を精査検討した結果
大平論文のABC地域区分では、低被ばく地域Cが甲状腺がん発生ゼロの会津地域と、地理的に離れた甲状腺腺がん発生の多い
いわき市(国連科学委員UNSCEARの甲状腺被ばく線量評価で福島県59市町村中最高、放医研による甲状腺被ばく線量評価でも、いわき市、双葉町、飯館村が福島県内最高)と組み合わせて構成されたために、高・中・低被ばく地域(A,B,C) の甲状腺がん発生率が外部被ばく線量の順と逆転し、相関が無くなっていることが判明した。よって
外部被ばくと関連性なし 18歳以下の甲状腺がん有病率
と広報されている被曝影響を否定する結論は誤りと考えられる。

以下で大平論文を検証し、論文結論とは逆に、
福島甲状腺がんは被ばく線量に比例する
ことを提示する。

発病率-被曝線量の関係を見る場合、グループの取り方が極めて重要、グループの選び方によって関係は見えなくなる。被爆線量は県民健康調査の基本調査で分かった個人の外部被ばく線量の結果から
原論文1.のグループ分けは 
図1. A.高被ばく地域:外部被ばく線量が5ミリシーベルト以上の人が1%以上 C.低被ばく地域:外部被ばく線量が1ミリシーベルト以下の人が99・9%以上 B.それ以外の中被ばく地域 平均化されて相関が隠れそうな、非常に広い区域分けである。
大平論文地域分
低被ばく地域Cとして、甲状腺がん発生ゼロの会津地域と、地理的に離れた、甲状腺がん発生の多いいわき市と組み合わせられている。福島県健康基本調査では外部被ばく線量が1ミリシーベルト以下の人が99・9%以上の条件は満たしているが、国連科学委員会UNSCEAR2013甲状腺被ばく線量 6)と比較すると
県調査      いわき市 0.3ミリシーベルト
UNSCEAR2013 いわき市 31.16ミリシーベル
福島県59市町村中で、甲状腺被ばく線量はいわき市が最高である。甲状腺計測、WBC検査、大気拡散シミュレーションを考慮した放医研による甲状腺線量の再構築 8)でも、いわき市、双葉町、飯館村が1歳児甲状腺被ばく線量の福島県内最高値30mSvを示している。
福島県による外部被ばく線量のみによって地域分けをした結果、甲状腺がん発生率が外部被ばく線量の順と逆転して、相関が無くなるという誤りを犯している。

他方natureflowの小論 福島甲状腺がんは被ばく線量に比例する⇒被ばく影響であるでは
1群原発周辺、2群浪江・南相馬・飯館、3群福島市・郡山市を含む福島中通り、4群いわき市、5群会津、6群西会津に順に、汚染が少なく、外部被ばく線量が低くなっていく。各群の外部被ばく線量は「県民健康調査」検討委員会資料 外部被ばく線量推計結果 推計期間(3/11~7/11) の線量推計値から、~1未満=0.5 ~2未満=1.5・・・として、一時検査受診者数で加重平均して求めた。平均線量が0.5を下回る会津(=0.1) 南会津(=0.2) いわき市(=0.3) については平均値を使った。
図2.1群~6群の地域地図 ダブルクリックすると大きくなります。
福島甲状腺がん6群地図
上記区分は、放射線プルームの地図、ヨウ素プルームの解析論文7)などを参考に、できる限り同程度の放射線量の近隣市町村を同じ区分にするようにした。
図3.放射性ヨウ素I-131の降下量の分布
放射性ヨウ素沈着量の分布
図4.福島県甲状腺がん・がん疑い172人(2016.3.31現在、2016.6.6発表)と比較 9)
福島甲状腺がん2016.3.31

図2・3・4を比較すれば、原発周囲、北西方向への高汚染地域は高いがん発生率、いわき市を含む県東南部は放射能プルームによる汚染を受けてがん発生あり、低汚染会津地域(5・6群)は有病率≒0、がん発生なし、などよく対応している。図2の地域区分の妥当性が納得されるのではないか。
・・・・・・・・・
福島医大・大平論文のABC地域区分(図1)では、低被ばく地域Cが甲状腺がん発生ゼロの会津地域と、地理的に離れた、甲状腺がん発生の多いいわき市と組み合わせて構成されたために、高・中・低被ばく地域(A,B,C) の甲状腺がん発生率が外部被ばく線量の順と逆転して、相関が無くなっている。
・・・・・・・・・
図2.の1~6群で解析すると以下の結果を得た。
図5. 先行+本格検査(2011-2015)における甲状腺がんの発生率と外部被ばく線量の関係
甲状腺がん線量関係先行本格いわき修正
甲状腺がんの発生率が、外部被ばく線量に比例して(原点を通る直線に沿って)増加
決定係数R² = 0.98 で極めて強い相関を示す。 [R² (0~1 )が1 に近いほど相関関係が強い]
統計学的有意性については、p=0.00001 で極めて有意である。[一般にp<0.05で有意]

備考 甲状腺被ばく線量と実効被ばく線量・外部被ばく線量
[体内に取り込まれたヨウ素 131 は、ほとんどが甲状腺に取り込まれてしまうので、甲状腺被ばく線量は、実効線量を25倍したものに近い。甲状腺検査を実施する福島県が、本来評価すべき甲状腺被ばく線量の代わりに、説明なしに、約1/25の外部被ばく線量のみを評価し、これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない ことから、「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価しているのは大きい問題である。]

関係論文
1)原論文 外部被ばく線量に基づく甲状腺がん有病率の比較 Medicine掲載.pdf
2)解説 外部被ばくと関連性なし 18歳以下の甲状腺がん有病率 福島民報 2016/09/09
3)私論 福島甲状腺がんは被ばく線量に比例する⇒被ばく影響である
4)「県民健康調査」検討委員会資料
5)第 23 回「県民健康調査」検討委員会
6)UNSCEAR 2013 REPORT 
Average absorbed dose to thyroid in 10-year-old children in first year for Fukushima Prefecture
7)Atmospheric behavior of radioactive materials from Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant T.OHARA et al. 
8)放医研による甲状腺線量の再構築  
9)なぜ福島県の子どもに甲状腺癌が増加しているのか?地図化して比較する
10)Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014
May 2016 Tsuda, Toshihide; Tokinobu, Akiko; Yamamoto, Eiji; Suzuki, Etsuji 

2016.11.03 Thu l 福島甲状腺がん l コメント (1) トラックバック (0) l top

コメント

外部被曝との相関に意味があるか?
福島県内における小児甲状腺がんについては、福島第一原発の爆発により飛散した、放射性微粒子の吸引による内部被曝の影響が疑われているので、もし、被曝線量と甲状腺がん発生との相関を、学術として探るのであれば、調査対象者が、原発の爆発当時に居た場所での、内部被曝量を何らかの方法で推計し、その被曝量を含めた被曝量と、甲状腺がんとの関係を、疫学の手法で探る必要があるでしょう。被曝量を外部被曝に限定していたり、調査対象者が爆発当時に居た場所での被曝量を推計しない研究が、科学と言えるのかどうか甚だ疑問ですし、このようなレポートを、公立機関が論文と称して発表することは、これからの原発事故処理を議論する上で、大きな障害になるのではないかと思います。
2017.01.06 Fri l さとうひろし. URL l 編集

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