(耕論)北朝鮮、どう警戒する 李洪千さん、菊池朋之さん、石丸次郎さん
朝日新聞 2017年9月9日朝刊より転載

 相次ぐミサイル発射に核実験。9日に建国69周年を迎える北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)政権の挑発が止まらない。独裁国家で何が起きているのか、どう怖がればいいのだろうか。
 ■メディアは危機あおるな 李洪千さん(東京都市大学准教授)

 日本のメディア、とくにテレビの情報番組は、北朝鮮の脅威を過大に伝えているようです。専門知識もないコメンテーターが、刺激的な発言をして人々の不安をあおります。テレビ局は、安上がりに視聴率を稼ぐことを考え、現実を正しく伝えるという本来の役割を放棄しています。

 例えば金正恩(キムジョンウン)氏が登場したときは経験不足の若者で、権力を掌握できないと伝え、今は「恐怖の独裁者」と描く。本人が変化したというより、メディアが見たい姿を伝えているだけではないですか。

 先月29日、北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験をしJアラート(全国瞬時警報システム)が発せられた。ミサイルは国際宇宙ステーション(400km) より高く飛んだ(~550km)とみられます。しかも海に落ちた後なのに、ほとんどのテレビ局が政府の発表を長々と繰り返しました。

 地震や津波は、一刻も早く人々に発生を知らせ、避難を呼びかける必要があります。瞬時に通過したミサイルへの対応も震災と同じでいいのでしょうか。メディアは、政府の発表を垂れ流すだけではなく、Jアラートの出し方が適切だったのか、列車の停止や休校などの対応は必要なのか、を検証すべきです。

 北朝鮮に攻撃される可能性が一番高いのは韓国です。最近でも北朝鮮に近い島が砲撃されたり軍艦が撃沈されたりし、多くの犠牲者が出ました。ソウルが攻撃されたら、まずは大きな建物や地下道に避難するよう指示されています。有事には、軍隊を除隊した市民を予備軍に招集します。男性は毎年、数日間、職場を休んで軍事訓練を積み、いざというときに備えます。

 一方韓国のメディアは、対話派から強硬派まで様々な専門家が自由に意見を交わしている。日本の対応は右往左往しているように見えます。

 北朝鮮に実際に行ったり友だち付き合いをしたりしている日本人はほとんどいないので、メディアが伝えることを信じやすい。一方、韓国との関係では「嫌韓本」が売れても韓流ドラマやKポップは相変わらず人気です。韓国に自由に行けて本物に触れることができる。ファンは嫌韓本の一方的な内容が、現実とかけ離れていることを知っているのであまり影響されません。

 報道の影響が社会に広がることが心配です。危機をあおれば社会の同調圧力が強まり、国民は政府の言うことに従うようになる。「北朝鮮と対話せよ」という意見は出しにくく、校長は「我が校は避難訓練はしない」と言えなくなる。外国人を危険視し、排除する動きも気になります。

 政権はメディアをいかに利用しようかと考えています。日本のメディアは過去、戦争に加担した苦い歴史があります。危機のときこそ、立ち止まって考えてみてください。

 (聞き手・桜井泉)
 イホンチョン 68年生まれ。メディア研究専攻。韓国記者協会勤務をへて99年来日。共著に「インターネットが変える選挙」。
2017.09.09 Sat l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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