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2017年のノーベル文学賞を受賞する英国人作家、カズオ・イシグロさんのストックホルムでの記者会見、受賞記念講演から受けた強いメッセージを記録しておく。

★冷戦は終わったが現在、世界は再び危険になりつつある。前進し続けると信じていたリベラルで人道主義的な価値観は、幻想だったのかもしれないと思い知らされた。沈黙するのではなく、私たち誰もが個人を超えて世界に関わることがとても重要だ。民主主義という特権を持っている西洋はなおさらだ。・・・・そして日本も!!

実はノーベル賞を受けられるまでイシグロ氏を知らなかった。話題になってから長崎が舞台の第1作「遠い山なみの光」次いで「日の名残り」を読んでいる途中。
退職し、子どもたちが独立して、日の名残りの中で暮らしている私には、氏の小説は面白く深い共感を覚える。これは年のせいかしら?
1)カズオ・イシグロさん会見 「世界の分断埋めたい」
日経 2017年12月10日
2)「国境や分断超えるものに訴える」 イシグロさん講演要旨
日経 2017年12月10日

カズオイシグロ

☆ 「ノーベル賞は人々の融合を促す力がある。世界の分断を埋めることに貢献できたらうれしい」

☆ 「私の母も原爆の犠牲者だった。ある意味、私は原爆の影の中で育ってきた」

★ 「冷戦は終わったが現在、世界は再び危険になりつつある」 

☆ 今年のノーベル平和賞に選ばれた核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)について「新たな世代がICANのようなうねりを作っていることは大きな喜びだ」

☆ 「自分の小さな世界を超えて、そのまわりの大きな世界とをいかに結びつけるかに常に関心があった」

★ 沈黙するのではなく、私たち誰もが個人を超えて世界に関わることがとても重要。
  民主主義という特権を持っている西洋はなおさらだ
・・・・そして日本も。

☆ 私にとって大切なのは、国境や分断を超えて人間が共有するものに訴えかけるということだ。

☆ 私たちより年配の世代が、欧州を全体主義や大虐殺の地からリベラルで民主主義の地に変えてきた。

☆ 欧州や米国の政治的な出来事。世界中で相次ぐテロ行為。

★ 前進し続けると信じていたリベラルで人道主義的な価値観は、
  幻想だったのかもしれないと思い知らされた。


1)カズオ・イシグロさん会見 「世界の分断埋めたい」
ノーベル賞 人類の課題象徴 母親が被曝 核の脅威なお 日経 2017年12月10日 より転載
 【ストックホルム=小滝麻理子】2017年のノーベル文学賞を受賞する英国人作家、カズオ・イシグロさん(63)が6日、ストックホルム市内で10日の授賞式に先立ち記者会見した。「ノーベル賞は人々の融合を促す力がある。世界の分断を埋めることに貢献できたらうれしい」と語り、母親が長崎市で被爆した過去にも言及。「核兵器の脅威はなくなっていない」と述べ、核廃絶の取り組みへの支持を表明した。

 イシグロさんは長崎市で生まれ、5歳まで日本で育った。1982年に発表した長編小説第1作「遠い山なみの光」は戦後の長崎が舞台。会見では「私の母も原爆の犠牲者だった。ある意味、私は原爆の影の中で育ってきた」と振り返った。

 その後、英国に移住した後も冷戦下の欧州で核兵器の脅威が続いた。イシグロさんは「冷戦は終わったが現在、世界は再び危険になりつつある」と発言。今年のノーベル平和賞に選ばれた非政府組織(NGO)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)について「新たな世代がICANのようなうねりを作っていることは大きな喜びだ」と語った。

 作品「日の名残り」や「忘れられた巨人」などを通じて、個人とより大きな世界や国家との関連を模索してきたイシグロさん。「自分の小さな世界を超えて、そのまわりの大きな世界とをいかに結びつけるかに常に関心があった」と話した。

 英国の欧州連合(EU)離脱や難民危機など、過去数年間で西洋社会の多くが深刻な分断やアイデンティティーの危機に陥っていると指摘。「沈黙するのではなく、私たち誰もが個人を超えて世界に関わることがとても重要だ。民主主義という特権を持っている西洋はなおさらだ」と語った。

 日本の読者に対しては「(受賞の)祝福をしてくれて感動した」と顔をほころばせた。「村上春樹さんの受賞への期待が強かったとも聞いていたので」とも発言。「私の一部は日本人」と語り、日英2つのアイデンティティーを持つ者として「誇りに思う」とした。

 子供の頃から愛読していた漫画の表現方法に興味があることにも触れ、米国の出版社と漫画の創作を話し合っていることを明かした。「小説家はともすれば閉じこもってしまいがち。様々な人と協業して、想像力を膨らませることを大切にしている」と語った。

2)「国境や分断超えるものに訴える」 イシグロさん講演要旨
日経 2017年12月10日
 ノーベル文学賞を受賞するカズオ・イシグロ氏が7日行った記念講演の要旨は次の通り。

7日、ストックホルムのスウェーデン・アカデミーで講演するカズオ・イシグロ氏=AP

 1979~80年の冬から春にかけて事実上、クラスの5人の友人と、朝食を買っていた店主、今の妻でガールフレンドだったローナを除いて誰とも話さなかった。

 バランスの取れた生活ではなかったが、その4~5カ月の間に、核爆弾の投下から復興の過程にあった長崎を舞台にした最初の作品「遠い山なみの光」の半分を完成させた。その数カ月がなければ、作家になっていなかった。私にとって極めて重要だった。

 5歳の時に両親と英国に来た。私は小学校でただ1人の英国人ではない子どもだった。

 家庭の中では異なるルール、異なる言葉があった。両親のもともとの心づもりでは、1年か2年で日本に戻るはずだった。毎月日本から前の月の漫画や雑誌が届いた。

 祖父母や住んでいた伝統的な日本の家、橋の近くの凶暴な犬など多くの思い出があった。

 「私の」日本はユニークで同時に非常に壊れやすい。その場所について考えた全てのことが心から永遠に消えてしまう前に書き留めていた。小説の中で私の日本を築き直したいと思っていた。

 アウシュビッツ強制収容所跡を訪れ、私たちの世代がその影の下で育った暗黒の力の核心に近づいた気がした。

 アウシュビッツの地元の人たちは収容所を保存すべきか、放置すべきか、ジレンマを抱えていた。どうやって記憶にとどめていくのか、私には強烈な隠喩に思えた。

 忘却と想起の間で葛藤する個人について書いていたが、同じ問題に直面する国家や地域社会を取り上げたいと強く思うようになった。

 一、良い物語は、急進的であろうが、伝統的であろうが、読者を感動させ、楽しませ、怒らせ、驚かせるような関係性を含まなければならない。

 私にとって大切なのは物語が感情を伝えることであり、国境や分断を超えて人間が共有するものに訴えかけるということだ。

 私は周囲の不満や悩みに気付いていなかった。私が知っていた世界は小さいものだと分かった。

 2016年は驚きの年で、私にとっては気がめいる年だった。欧州や米国の政治的な出来事。世界中で相次ぐテロ行為。前進し続けると信じていたリベラルで人道主義的な価値観は、幻想だったのかもしれないと思い知らされた。

 私たちより年配の世代が、欧州を全体主義や大虐殺の地からリベラルで民主主義の地に変えてきた。

 目覚めつつある怪物のように人種差別主義が再び台頭している。

 60代になった。私は最善を尽くしていく。まだ文学が重要だと信じている。

 私たちを鼓舞し、導く若い世代の作家たちに目を向けている。今は彼らの時代だ。

 不確実な未来に重要な役割を担おうとするなら、私たちはより多様であらねばならないと私は信じている。

 分断が危険なまでに深まる時代、私たちは耳を澄まさなければならない。良い作品を書き、読むことで壁は打ち壊される。〔共同〕
2017.12.10 Sun l 未分類 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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