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たまり続けるプルトニウム、民生用では英仏露米に続いて世界5位、原爆約6千発分に相当する量。中国は持たない。
<視点>核燃料サイクル、幕引きを

 原子力委員会がプルトニウム保有量の上限を「現在の水準」(約47トン)と明示したことは、日本の核燃料サイクル政策がいよいよ立ち行かなくなった現実を示すものだ。
 新方針によって、2・9兆円を投じて建設中の六ケ所再処理工場(青森県)は本格稼働を待たず、運転計画が暗礁に乗り上げる可能性が出てきた。

 それでも政府は、原発のすべての使用済み核燃料に再処理を義務づける「全量再処理」路線を堅持する。大量の使用済み核燃料が、いつ再処理できるのかわからず、国内で長期保管を強いられるのは必至だ。

 核燃料サイクルはそもそも、核兵器材料のプルトニウムを民間市場に流通させることで成り立つ。核拡散のリスクを本質的にはらんでおり、削減に手間取れば当然、国際社会からの批判にさらされる。

 しかし、今回の新方針も肝心の具体的な削減目標や手段、時期などには踏み込まなかった。政府は削減に向けた詳細な道筋を、早急に世界に示す必要がある。

 一方、新方針は研究開発用のプルトニウムについては、「処分」も含めて検討するとした。政府が真剣に削減を目指すのなら、「資源」と位置づけてきた電力会社の保有分にもこの方針を広げ、「ごみ」として廃棄処分する研究にも、すみやかに着手すべきだ。

 核燃料サイクルが目指したプルトニウム利用はすでに経済性を失い、欧米では実際、廃棄処分への取り組みが進む。損失が拡大する前に、いかにプルトニウム利用から手を引くかが、世界の潮流だ。日本も、核燃料サイクルの幕引きにとりかかるときである。

1.プルトニウム上限47トン 現有分、削減には課題 原子力委
2.再処理工場、稼働に制限も 進まないプルトニウムの再利用
2018年8月1日朝日朝刊より転載

1. 内閣府の原子力委員会は31日、日本が国内外に保有するプルトニウムについて、現在の約47トンを上限とし、削減につなげる新たな方針を決定した。使用済み核燃料の再処理は、原発の燃料として再利用する分に限って認める。建設中の六ケ所再処理工場(青森県)は、稼働が制限される可能性があり、政府が掲げてきた核燃料サイクル政策は形骸化が強まりそうだ。▼3面=進まぬ再利用

 方針の改定は15年ぶり。原子力委員会は、2003年の方針で「利用目的のないプルトニウムを持たない」として核兵器の原料になるプルトニウム保有に理解を求めてきた。これに対し、新方針は初めて保有量の削減に踏み込んだうえで、「現在の水準を超えることはない」とした。

プルトニウム上限47トン 現有分、削減には課題 原子力委 続き
 日本はプルトニウムを国内に約10・5トン、再処理を委託した英仏に約36・7トン持つ。原爆約6千発分に相当する量で、今年7月に日米原子力協定が30年の満期を迎えるにあたり、米国などから具体的な削減策を示すよう求められていた。

 新方針は、五つの対策を示した。ふつうの原発で再利用するプルサーマル発電に必要な分だけ再処理を認める▽再処理工場が「適切」に稼働できる水準まで減らす▽電力会社の連携で海外保有分を減らす▽利用方針が明確でない研究用プルトニウムの処分を検討▽使用済み燃料の貯蔵容量を増やす、などを盛り込んだ。

 また、電力会社などに対し、余剰分の具体的な利用計画を毎年公表することも求めている。

 日本は、プルトニウムを使う高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉が決まり、プルサーマルも計画通り進んでいない。一方、3年後に完成する予定の再処理工場がフル稼働すれば、年間約7トンのプルトニウムが取り出される。

 電気事業連合会は原発16~18基でプルサーマルを導入すれば、再処理工場がフル稼働しても保有量を減らせると試算する。だが、現在導入できたのは4基で、原子力委によると、現状のままなら、再処理工場の処理能力の4分の1程度しか稼働できなくなるという。

再処理工場、稼働に制限も 進まないプルトニウムの再利用 より
 内閣府の原子力委員会は、たまり続けるプルトニウムの保有量に上限を設け、現状の約47トンから削減する方針にかじを切った。核拡散への懸念を払拭(ふっしょく)する狙いだが、実際に減らしていけるかは、関係省庁や電力会社の取り組みに委ねられる。▼1面参照

 ■プルサーマル、再稼働は4基

 「かなり大きな一歩」。原子力委員会の岡芳明委員長は31日の記者会見で、新方針の意義をこう強調した。

 新たな方針は、日本原燃の六ケ所再処理工場(青森県)の稼働をコントロールすることが柱になる。

 日本原燃の計画では、工場は約3年後に完成し、使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理が本格的に始まる。新方針のもとでは稼働が大幅に制限される可能性がある。経済産業省による認可で、必要な分だけ再処理を認める仕組みにするが、プルトニウムの再利用そのものが停滞しているからだ。

 プルトニウムとウランを混ぜた「MOX燃料」をふつうの原発で使うプルサーマル発電は、電気事業連合会の計画通りに16~18基で導入できれば、年に8~10トンを消費できる。一方、工場がフル稼働すると、新たに分離されるプルトニウムは年に約7トンで、収支のバランスが取れる。

 ただ、東京電力福島第一原発事故後、プルサーマルで再稼働した原発は4基のみ。通常の再稼働とは別の許可を受ける必要があり、今後も大きく増える見通しはない。

 保有量の8割近くを占める海外分は、六ケ所の工場が着工する前から、英仏の施設に再処理を委託した分だ。新方針は、電力各社で融通し合うことで海外分も減らすよう促す。再稼働が進む関西電力などの原発で、東京電力など他社分を燃やすことを想定する。

 電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は7月20日、「電力間の融通を検討していない。各社でプルサーマルを含めた再稼働をやっていくのが大前提」と消極的な姿勢を示した。再稼働が進む電力会社にとっては「地元との信頼関係を崩しかねない」(電力業界関係者)からだ。

 新方針は、日本原子力研究開発機構の施設などに約4・6トンある研究開発用について、捨てる選択肢も検討すると踏み込んだ。使い道がほとんどなく、核テロ防止などの観点から削減を求められていた。ただ、具体的な処分法は決まっておらず、処分地を見つけるのも難航が予想される。

 (川田俊男、桜井林太郎)

 ■英、有償で引き取りを提案

 プルトニウムの削減には、プルサーマル以外の選択肢もある。

 日本が英国で保有するプルトニウムについて、英国政府は日本側が「十分にお金を払う」ことを条件に引き取ることを提案する。だが、電力会社は否定的だ。政府関係者も「あくまでプルサーマルで燃やす」と言う。プルトニウムを「資源」として再利用する核燃料サイクルの前提が崩れてしまうからだ。

 英国にある約21トンは、現状では日本に持ち帰るのが難しい事情もある。英国のMOX燃料工場は2011年に閉鎖され、燃料に加工できない。加工前のプルトニウムを日本に輸送すれば、核拡散への懸念から国際問題に発展しかねない。このまま「塩漬け」になれば多額の保管料を払い続けることになる。

 一方、欧州では、英国に余剰分を引き取ってもらう動きが広がる。ドイツやスウェーデン、オランダで実績がある。英国にとっては、自国分と一緒に処分でき、必要な資金も確保できる。

 再処理をやめた米国も、解体した核兵器から出たプルトニウムの処分に悩む。MOX燃料にして原発で使おうとしたが、予算超過などで断念。代わりにプルトニウムを少量ずつ分け、化学物質を混ぜて薄め、地層処分する「希釈処分」を検討する。

 (小川裕介、香取啓介=ワシントン)


2018.08.04 Sat l 使用済み核燃料・廃炉 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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