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External Radiation Dose, Obesity, and Risk of Childhood Thyroid Cancer after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: The Fukushima Health Management Survey
↑クリックすると原論文出てきます。
Epidemiologyに発表された「外部被ばく放射線量、肥満と小児甲状腺癌のリスク
福島第一原子力発電所事故:福島県民健康調査」 の結論
★甲状腺がん発病率は個人・地域被ばく線量と相関がない
★肥満は通常と比べて2.6倍のリスクがある

には重大な誤りがあると考えられる。

大平ら福島県立医大グループ(FMU)は、福島健康調査2巡目スクリーニング(2014-2015)における小児甲状腺がんと外部線量との関連を研究した。[1] 彼らの結論は
① 個人外部被ばく線量は甲状腺癌の発病率と関連しなかった
② 地域外部被ばく線量は甲状腺癌のリスクの増加と関連しなかった 
③ 肥満(obesity)と甲状腺癌の発生率との間には正の相関があった
ここでは、3つの結論を検討する。科学論文において、通常は、他の研究者が解析結果を再現できるための情報を提供することが著者に求められるが、福島県民健康調査(FHMS)のデータはその組織内に限られると宣言されており、読者は論文の解析結果を検証再現することができない。
しかしながら、提示された解析結果と結論の間に矛盾があり、3つの結論とも重大な瑕疵があると考えられる。

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コメントat福島原発事故による甲状腺被ばくの真相を明らかにする
1. 個人外部被ばく線量は甲状腺癌の発病率と関連しなかった① について
著者らはFHMSの非公開個人データの解析から、甲状腺がん発生と個人外部線量との間に正の相関関係があることを示唆する3つの重要な発見を報告している。
(i) 2巡目受験者の中で甲状腺がんであった者(n=36)の平均外部線量は1.1 mSvであり、甲状腺がんでなかった者(n=113,150)の平均値0.92 mSvよりも高かった。(Table1[1])
(ii) 2巡目受験者のうち、甲状腺がんであった者、なかった者の中の外部被ばく線量 ≥1 mSvであった者の割合は、それぞれ58%および42%であった。(Table1[1])
以上、2巡目受験者のうち、甲状腺がん・疑い患者の外部被ばく線量が甲状腺がんでなかった者の外部被ばく線量より高い事実は、甲状腺がんと個人外部線量との間の正の相関を示唆している。
(iii) 個人外部線量 ≥2 mSvである受験者の甲状腺がんの相対的なリスクは、個人外部線量<2 mSvの受験者グループと比較して相対リスクRR=2.09 (95%CI=0.81-5.40) と2倍程度高かった。
高い個人外部線量のグループにおいて甲状腺がんのリスクが高いことは、甲状腺がんと個人外部線量との直接的な関連を示している。

個人外部線量と甲状腺がん発病リスクに関するこれら3つの発見は、事故から4~6年における甲状腺がん発生率と放射線被曝との間に強い相関かあることを示唆している。著者らは、3つの発見に意を止めることなく、甲状腺がんの発生率と個人外部被ばく線量との関連はないと結論付けた。論文内には個人外部線量との関連がないという根拠は示されていない。

2. 肥満(obesity)と甲状腺がんの発生率との間には正の相関があった③ について
著者らは、肥満(obesity、BMI値が全体の95%以上)、過体重(overweight、BMI値が85%-95%)、通常体重の受験者(BMI値が85%以下)の3グループに分けて、各群の甲状腺がんの相対的なリスク
RR= 1 : 0.58 : 2.26 for (Normal weight-) : (Overweight-) : (Obesity-) children を求め(Table 3[1])
・肥満と甲状腺がんの発生率との間に正の相関があると結論した。RR(95%CI)=2.26(1.03-4.95) 
しかし同じデータから
・過体重と甲状腺がん発生率の間に-42%、RR(CI)=0.58(0.18-1.85)の負の相関がある
 (調整を加えない粗データからは 肥満:OR(RR)=1.71(0.8-3.8) 過体重:0.48(0.15-1.53))
著者らは、95%以上の肥満は甲状腺がんの発生を促す危険因子であるが、85%-95%の過体重は、甲状腺がんを抑制すると考えるのであろうか。
BMIが通常→過体重→肥満と増えるにしたがって、がん発生率が1→0.58→2.26 と変化することからは、体重増加がリスクを増加させたという結論は導けない。
FMUは、”Therefore, the Fukushima nuclear power plant accident may have led to an increased risk of thyroid cancer due, in part, to weight gain.” としている。

Obesity
図1.甲状腺がん発生の相対リスクとBMIとの相関 (Ref.1のTable 3より)
普通(BMI 0-85% n=220,146)、過体重(85-95% n=22,392)、肥満(95%以上 n=14626)、破線は信頼区間


★1 原発事故による避難に伴う生活の変化で体重増加を招き、甲状腺がんのリスクを高めた→肥満由来の甲状腺がん”を考えているようであるが、過体重(太りすぎ)は甲状腺がんリスクを減少させているので、体重増加がリスクを増加させたという結論は誤りである。
★2 もし肥満が甲状腺がんを発生させたとしたら、事故後1巡目(2011-2013)・2巡目検査で測定されたBMIによる肥満由来甲状腺がんが2巡目検査内で発見されたことになり、肥満由来甲状腺がんの潜伏期間が2年以内も想定されていることになる。これはFMUが被ばくによる甲状腺がんの潜伏期間4-5年としているよりもはるかに短い潜伏期間で、1巡目の ”Preliminary baseline examination”の命名とも矛盾する。
★3 肥満と甲状腺がん発生との正の相関は、原因ではなく、著者らが触れているように甲状腺がん(に関連する甲状腺ホルモン障害など)の結果である可能性が高いのではないか。

3. 地域外部被ばく線量は甲状腺がん発生リスクの増加と関連しなかった② について
福島県の甲状腺がんと原発事故による被ばく線量との関連の可能性が高いことは、以下の2点からも明らかである。
(i) 最も汚染が少ない会津地域 (グループE、福島県の39%の面積)の甲状腺がんの発生率は最も低く、甲状腺がん発生の地域分布を調べる際、常にReference 地域とされている。会津以外の地域の会津地域に対する相対リスクRRは約2倍(A+B+C+D) : E = 1.93 (95%CI= 0.78-4.8 )である。(Table 2[1]より)
(ii) 放射性プルームによる高汚染地域A+B+Cの癌発生率 51/142,311=35.8 /100,000は、低汚染のD+E地域の発生率、18/99,521=18.1 / 100,000と比較して相対リスクRRは約2倍
(A+B+C): (D+E)= 1.98 (95%CI=1.16-3.39) である。(Table 2[1]より)
著者らは、肥満がBMIによって3分割されたグループの解析から、肥満グループの相対リスクが高く、肥満を甲状腺がんの危険因子であると結論した。この手法を地域別外部被ばく線量に適用すると、福島の地域別甲状腺がん発生率が地域外部被ばく線量と強い相関を示すという妥当な結論が得られる。

しかしFMUはA-Cグループの高い甲状腺がんリスクを、2次検査・BC判定者に対する穿刺吸引細胞診(FNAC、医師の必要性判断で行われる)の割合が高いこと[A,16.3%, B,14.7%, C,11.4%に対してD,7.0%, E:7.1%]で説明できるとしている。福島県甲状腺検査のページで、2次検査で「医師が必要と判断した場合は、穿刺吸引細胞診を行う」と公表されており[3]、FMU外のものは、甲状腺超音波検査ガイドラインに沿って主としてFMUの医師が必要性を判断していることを信頼する以外になく、発表された結果をそのまま受け止める。
実際には2次検査の細胞診と経過観察の決定はどのように行われているのか。経過観察中に甲状腺がんと診断された者については、健康調査の結果には集計されない[4]ことから、細胞診の実施の可否が甲状腺がん診断数に直結していることをFMUは認識していることになる。そのうえで、「高汚染地域の2次検査受験者は被ばくの影響を心配するのでFNAC受診率が高いのであろう」と推測している。果たしてFNACは受験者の希望によって医師の必要判断がなされるのであろうか。福島県立医大からの正確な回答が必要である。

4. 福島県健康調査(FHMS)の目的の変容
福島県立医大グループは、福島県民健康調査FHMSの目的は甲状腺がん発生に対する低線量放射線被曝の長期的な影響を検出し、福島県民の不安を軽減することにあると考えているようである。
to detect the long-term effects of low-dose radiation exposure on thyroid cancer incidence and to reduce anxiety among residents in Fukushima[1]
これはFHMSの当初の目的「住民の長期的な健康状態を把握し、彼らの将来の幸福を増進し、低線量放射線被ばくが長期的な健康に影響を与えるかどうかを確認する」とは明らかに違いがある。
to monitor the long-term health of residents, promote their future well-being, and confirm whether long-term low-dose radiation exposure has health effects
もし著者らが放射線被曝の健康影響がない、あるいは極めて低いと証明することによって住民の不安を減らすことに熱心であれば、解析は放射能安全側に傾きがちであろう。これでは検査の本来の目的「長期的な低線量被ばくの健康への影響があるかどうかを確認する」ことは達成できない。FHMS のデータが FMU の組織内のみに限定されているのは、福島県民の健康にとって、また放射性プルームの拡散によって被ばくした県外住民にとっての大きい脅威となる可能性がある。放射能安全側へのバイアスは、本論文での甲状腺がんと地域被ばく線量との相関と、肥満との相関での結論の導き方を比較すれば顕著である。

5.甲状腺がん有病率・発生率と地域被ばく線量との線型関係
大平氏らの論文[2]へのレターにおいて、Katoは2巡目を含む解析で福島県の小児甲状腺がんの事故6年後の有病率と被ばく線量との線形関係を明らかにした。[5] 大平氏らは外部被曝が1mSv(ミリシーベルト)を超える住民の比率P=66%, 55.4%, 5.7%, 0.67%を境界としてAからEの5地域に分類して相関がなかったとしているが、公表されている県民健康調査「基本調査」からは彼らの地域区分を再現できなかった。大平らの地域分割の方法で、基本調査データから外部放射線被曝1mSvを受けた住民の%(P)によって、P(A+B)≧55.4%>P(C)≧5.7%>P(D)≧0.8%>P(E) で福島県を4地域に分割。図2Bに各地域の外部被ばく線量と1巡目、1+2巡目(≒事故4年後、6年後の甲状腺がん有病率)および2巡目(≒事故4-6年間の発病率)との相関を[5]の表からプロットした。
O2model
図2.福島県4地域区分による甲状腺がん割合と外部被ばく線量、実効被ばく線量(UNSCEAR)との相関 (A)4地域区分 (B)甲状腺がん割合-外部線量相関(C)甲状腺がん割合-実効線量相関

図2Bは、中通り(A+B)、避難区域(C)、いわき相馬(D)、会津(E)4地域の2巡目の甲状腺がん発病率、1+2巡目の甲状腺がん有病率(6年後)が外部被ばく線量増加につれて直線的に増えることを示している。さらに、UNSCEARによる実効線量[6]と甲状腺がん有病率、発病率と間にはほぼ完全な線形関係(R2≧0.93, p≦0.04)が成立している。
1巡目で甲状腺がん割合に地域差がみられなかったのは、事故後間もなく(被ばく影響が現れる前に)避難区域・高汚染地域からスクリーニングが開始され、3年後の低汚染地域・会津へと実施されていったことによると考えられる。

放射線誘発甲状腺がんなどの確率的プロセスでは、約70人程度の少人数のがん発見にはランダム性がつきまとう。(さいころを60回振っても1-6の目が等確率に10回ずつ出ることはなくばらつきが生じるように) 地域差による線量応答がみられるかどうかは、地域分割に依存する。
大平らの5地域分割では線形応答が見られず、A+Bを結合して4地域で見ることで被ばく線量に比例して増える成分を持つことがその1例である。甲状腺がんがスクリーニング効果のみによって発見されたランダムな事象であれば、福島県の40%の面積の会津の甲状腺がん発生率が最小になることはなく、放射性プルームの通り道、原発周辺から北西部と中通り(A+B+C) が他地域(D+E)の2倍のがん発生率になることもあり得ない。
なお甲状腺がん有病率、発生率の外部被ばく線量、実効線量(UNSCEAR)への線形依存性については、1巡目のスクリーニング実施スケジュールに合わせた4地域区分[7]、FHMSの報告における避難区域、中通り、いわき相馬地区、会津の4地域区分でも観測されている。

References
1. Ohira T, E Ohtsuru A, Midorikawa S, et al. for the Fukushima Health Management
Survey group. External Radiation Dose, Obesity, and Risk of Childhood Thyroid Cancer after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: The Fukushima Health Management Survey. Epidemiology: 2019 - Volume Publish Ahead of Print
doi: 10.1097/EDE.0000000000001058
2. Ohira T, Takahashi H, Yasumura S, et al. Associations between childhood thyroid cancer and external radiation dose after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident. Epidemiology, 2018; 29: e32-e34
3. 福島県甲状腺検査について 
4. 放射線医学県民健康管理センター「県民健康調査」Q&A
5. Kato T. Re: Associations between childhood thyroid cancer and external radiation dose after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident. Epidemiology. 2019; 30: p e9–e11
6. United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation, UNSCEAR 2013 Report, Effective doses in Japan for the first year
Estimated doses to evacuees in Japan for the first year.
7. Kato T, Dose dependence of pediatric thyroid cancer prevalence in the 6 years after the Fukushima nuclear power plant accident. Adv Pediatr Res. 2019; 5:26. doi: 10.24105/apr.2019.6.28.



2019.11.25 Mon l 福島甲状腺がん l コメント (0) トラックバック (0) l top

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